第144回(11月20日実施)、日商簿記検定2級を受験されたみなさま、本当にお疲れ様でした!
いかがでしたでしょうか。
これまでの勉強の成果を発揮し、合格を確信されている方もいれば、思わぬミスをしてしまい途方にくれている方など、さまざまかと思います。
この記事で今回の試験を振り返っていただき、その後はしばらく試験のことは忘れてゆっくりされるのもよいのではないでしょうか。
それでは、第144回日商簿記検定2級の解答・解説をしていきましょう。
第144回日商簿記検定2級の試験問題と解答・解説
オススメの解答順序と時間配分の目安
| 配点 | 解答順序 | 時間配分 |
第1問 | 20点 | 3 | 15分 |
第2問 | 20点 | 5 | 40分 |
第3問 | 20点 | 4 | 30分 |
第4問 | 20点 | 1 | 15分 |
第5問 | 20点 | 2 | 10分 |
見直し | ― | 6 | 10分 |
合計 | 100点 | ― | 120分 |
第1問 仕訳問題(配点20点)
全体的に難しい問題でした。
問1 ソフトウェア
(借)ソフトウェア30,000,000
(貸)ソフトウェア仮勘定30,000,000
(借)未払金10,000,000
(貸)普通預金10,000,000
非常に細かい論点ですので、面食らった受験生も多かったと思います。
正解できなくても大丈夫です。
問2 土地の売却
(借)当座預金24,000,000
(借)営業外受取手形16,000,000
(貸)土地24,000,000
(貸)土地売却益16,000,000
基本的な内容ですが、使用できる勘定科目に注意が必要でした。
営業外受取手形で処理できたか、売却益を固定資産売却益ではなく土地売却益で処理できたかがポイントです。
問3 クレジット売掛金・消費税
(借)クレジット売掛金312,000
(借)支払手数料12,000
(貸)売上300,000
(貸)仮受消費税24,000
消費税の税抜方式の論点が入っており、やや難しめの問題です。
税抜方式なので、売上は消費税を含めない金額(300,000円)で計上します。
そして、販売代金の8%の24,000円(=300,000円×8%)で仮受消費税を計上します。
さらに、クレジット手数料12,000円(=300,000円×4%)を支払手数料で処理します。
最後に、貸借差額でクレジット売掛金を計上します。
問4 仕入諸掛り・売上諸掛り
(借)発送費3,600,000
(貸)未払金3,600,000
(借)仕入1,200,000
(貸)買掛金1,200,000
または
(借)発送費3,600,000
(貸)未払金3,600,000
(借)仕入1,200,000
(貸)未払金1,200,000
問5 子会社株式の取得
(借)子会社株式29,000,000
(貸)その他有価証券4,000,000
(貸)普通預金25,000,000
株式の段階取得(複数回に分けて取得すること)により、支配を獲得したという問題です。
支配を獲得した(子会社になった)ことにより、その他有価証券から子会社株式に振り替えることになります。
これ2級の範囲???と思うような論点ですので、正解できなくても大丈夫です。
第2問 商品売買の一連の処理(配点20点)
難易度は高くありませんが、ボリュームがあり回答に時間がかかる問題でした。
4月5日
(借)甲商品640,000 ※1
(借)乙商品810,000 ※2
(貸)前払金600,000
(貸)買掛金850,000 ※3
※1 @3,200円×200個=640,000円
※2 @2,700円×300個=810,000円
※3 貸借差額
4月6日
(借)甲商品320,000 ※4
(貸)買掛金320,000
(借)買掛金270,000 ※5
(貸)乙商品270,000
※4 @3,200円×100個=320,000円
※5 @2,700円×100個=270,000円
4月10日
(借)売掛金3,300,000 ※6
(貸)売上3,300,000
(借)売上原価1,660,000 ※7
(貸)甲商品1,660,000
※6 @6,000円×550個=3,300,000円
※7 @3,000円×500個+@3,200円×50個=1,660,000円
4月11日
仕訳なし
出荷基準を採用しており、出荷時点で売上を計上しているため、検収完了時点では何も処理しません。
4月14日
(借)甲商品1,485,000 ※8
(借)乙商品460,000 ※9
(貸)受取手形900,000
(貸)買掛金1,045,000 ※10
※8 @3,300円×450個=1,485,000円
※9 @2,300円×200個=460,000円
※10 貸借差額
4月16日
(借)売上割引3,300 ※11
(借)現金3,296,700 ※12
(貸)売掛金3,300,000
※11 3,300,000円×0.1%=3,300円
※12 貸借差額
4月20日
(借)売掛金5,850,000 ※13
(貸)売上5,850,000
(借)発送費8,000
(貸)現金8,000
(借)売上原価2,950,000 ※14
(貸)甲商品1,295,000 ※15
(貸)乙商品1,655,000 ※16
※13 @6,500円×400個+@5,000円×650個=5,850,000円
※14 貸方合計
※15 @3,200円×150個+@3,200円×100個+@3,300円×150個=1,295,000円
※16 @2,500円×400個+@2,700円×200個+@2,300円×50個=1,655,000円
4月21日
(借)売上975,000 ※17
(貸)売掛金975,000
※17 @1,500円×650個=975,000円
4月25日
(借)電子記録債権800,000
(貸)売掛金800,000
4月28日
(借)売上割戻引当金13,000
(借)売上7,000 ※18
(貸)現金20,000
※18 貸借差額
4月30日
(借)商品評価損75,000 ※19
(貸)甲商品60,000 ※20
(貸)乙商品15,000 ※21
※19 貸方合計
※20(@3,300円-@3,100円)×300個=60,000円
※21(@2,300円-@2,200円)×150個=15,000円
当月の売上高:8,168,000円(=3,300,000円+5,850,000円-975,000円-7,000円)
当月の売上原価:4,685,000円(=1,660,000円+2,950,000円+75,000円)
当月末の売上割戻引当金の残高:11,000円(=24,000円-13,000円)
第3問 精算表の作成(配点20点)
基本的な精算表の作成問題です。
他の問題が難しめだったこともあり、ここはぜひとも満点を取りたいところです。
資料1①
(借)現金50
(貸)雑益50
現金の帳簿残高と実際有高の差額を雑益で処理します。
資料1②
仕訳なし
ひっかけ問題です。
裏書した手形がいくら決済されたかは関係ないため何も処理しません。
資料1③
(借)貸倒引当金23,000
(貸)売掛金23,000
前期に発生した売掛金の貸倒れなので、貸倒引当金を取り崩します。
資料1④
(借)建物1,500,000
(貸)建設仮勘定1,200,000
(貸)当座預金300,000
資料2
(借)貸倒引当金繰入7,940 ※1
(貸)貸倒引当金7,940
※1 (280,000円+390,000円-23,000円)×2%-(28,000円-23,000円)=7,940円
資料1③で減らした売掛金と貸倒引当金を考慮し忘れないように注意が必要です。
資料3
(借)有価証券評価損4,050 ※2
(貸)売買目的有価証券4,050
※2 (37,800円+81,900円+27,850円)-(41,500円+72,200円+29,800円)=4,050円
資料4
(借)仕入69,800
(貸)繰越商品69,800
(借)繰越商品88,150 ※3
(貸)仕入88,150
(借)棚卸減耗損1,505 ※4
(貸)繰越商品1,505
※3 @215円×410個=88,150円
※4 (410個-403個)×@215円=1,505円
資料5
(借)減価償却費297,390 ※5
(貸)建物減価償却累計額228,750 ※6
(貸)備品減価償却累計額68,640 ※7
※5 貸方合計
※6 旧:7,500,000円×0.9÷30年=225,000円
新:1,500,000円×0.9÷30年×1か月/12か月=3,750円
合計:225,000円+3,750円=228,750円
※7 (670,000円-326,800円)×20%=68,640円
資料6
(借)のれん償却28,000 ※8
(貸)のれん28,000
※8 196,000円÷7年=28,000円
前期末までに3年分償却済みなので、残りの7年間で均等償却します。
資料7
(借)満期保有目的債券1,200 ※9
(貸)有価証券利息1,200
※9 要償却額:500,000円-500,000×98.8円/100円=6,000円
当期償却額:6,000円÷5年=1,200円
資料8
(借)退職給付費用175,000
(貸)退職給付引当金175,000
資料9
(借)前払保険料30,000 ※10
(貸)保険料30,000
※10 120,000円×4か月/16か月=30,000円
残高試算表欄の保険料120,000円は、16か月分(平成27年4月1日から平成28年7月31日)の金額なので、翌期の4か月分(平成28年4月1日から平成28年7月31日)を繰延処理します。
第4問 費目別計算(配点20点)
基本的な形式の問題で、満点が狙える問題です。
原料の消費高を配賦基準として製造間接費を配賦する点に驚かれた方もいるかもしれませんが、やっていることはいつもと同じです。
~材料勘定~
月初有高:53,000円(=44,000円+9,000円)
当月仕入高:589,000円(=265,000円+275,000円+32,000円+17,000円)
直接材料費:515,000円(=220,000円+295,000円)
間接材料費:51,000円(=9,000円+32,000円+17,000円-7,000円)
~製造間接費勘定~
間接材料費:51,000(材料勘定から転記)
予定配賦額:824,000円(=(9,600,000円÷6,000,000円)×515,000円)
配賦差異:40,000円(貸借差額)
~仕掛品勘定~
直接材料費:515,000円(材料勘定から転記)
製造間接費:824,000円(製造間接費勘定から転記)
当月完成高:1,459,000円(貸借差額)
第5問 単純総合原価計算(配点20点)
材料の追加投入と仕損が発生する問題でした。
基本的な内容ですので、満点が取りやすかった問題です。
~A原料~
月末仕掛品原価:(560,000円+6,440,000円)÷(400kg+4,600kg)×800kg=1,120,00円
完成品原価:(560,000円+6,440,000円)-仕損品評価額20,000円-月末1,120,000円=5,860,000円
~B原料~
月末仕掛品原価:(130,000円+3,090,000円)÷(4,000kg+200kg+400kg)×400kg=280,000円
完成品原価:(130,000円+3,090,000円)-月末280,000円=2,940,000円
~加工費~
月末仕掛品原価:(400,000円+9,260,000円)÷(4,000kg+200kg+400kg)×400kg=840,000円
完成品原価:(400,000円+9,260,000円)-月末840,000円=8,820,000円
~完成品総合原価~
5,860,000円+2,940,000円+8,820,000円=17,620,000円
~当月完成品単位原価~
17,620,000円÷4,000kg=4,405円/kg
予想合格率と総評
合格率は25%前後と予想します。
第1問と第2問は見慣れない論点が多く出題されたため、得点しにくい問題でしたが、残りの第3問から第5問は基本的な内容で満点が取りやすい問題でした。
過去の本試験と同様、工業簿記でしっかりと点を積み上げられると合格がグッと近づく印象です。
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